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2018

9/26

【自然災害と口腔ケア】震災関連死を防ぐ、防災のための口腔ケア

記事概要

今年は、多くの自然災害に見舞われた年でした。1995年に起こった、阪神・淡路大震災では、震災関連死のうち24.2%が肺炎が原因で亡くなったという報告があり、そのほとんどが誤嚥性肺炎であると考えられております。日頃から、被災時の口腔ケアの重要性を理解しつつ、日頃の備えが必要です。被災時の口腔ケアについてブログ記事をまとめておりますので、是非お読み下さい。

自然災害に見舞われた1年

今年は、本当に多くの甚大な自然災害に見舞われた年になりました。

西日本の集中豪雨被害や、先日の北海道の震度7の巨大地震等など。数多くの自然災害は、容赦なく私達に襲いかかり、多くの被災者を出してしまいます。今回の様々な災害に見舞われた多くの方々に、心よりお見舞いを申し上げると共に、一日も早い復興をお祈り申し上げたいと思っております。

自然災害というのは、いつ何時、私達に降りかかるかは分かりません。
遠くで起こっている事と油断していると、明日にも巨大地震に見舞われるかも知れないのです。

かといって、過度に恐れることもないとも思います。
常日頃から、様々な激甚災害で被災された方々の経験を元に、様々な備えをすることが必要だと思っております。

今回のコラムでは、これら自然災害時に被災された皆様が、避難所などで困る口腔ケアについて歯科医療の視点から重要な事をまとめていきたいと思います。ぜひ、ご参考いただければ幸いです。

阪神・淡路大震災では誤嚥性肺炎で亡くなった方が24.2%

まず最初に、災害時の避難所で問題になった事について触れていきます。
約7年前に発生した東日本大震災でもそうでしたが、避難所では、口腔ケアが十分に行えないという問題が起こりました。

津波ですべてをさらわれてしまった東日本の被災エリアにある避難所では、被災直後の混乱した現場で、歯ブラシはもちろんのこと、お口をすすぐ飲料水も貴重なものでした。

入れ歯も流されてしまい、入れ歯の無い状態の人も多かったと聞きます。

また、1995年に起こった、阪神・淡路大震災では、震災関連死のうち24.2%が肺炎が原因で亡くなったという報告があり、そのほとんどが誤嚥性肺炎であると考えられております。
肺炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が肺に侵入し、炎症を引き起こす疾患です。災害時において特に注意が必要なのが、誤嚥性肺炎と呼ばれる肺炎です。
誤嚥性肺炎というのは、お口が不衛生になることで引き起こします。汚れた口腔内を放置しておくことで、ばい菌が混入した唾液が誤って気管支に流れ込んだりします。避難所では、十分な食事や睡眠がとれず過労状態に陥っていた事が予測され、体の抵抗力が落ちてしまいます。そんな状態で、ばい菌を含んだ唾液が肺に流れ込んでしまうと容易に誤嚥性肺炎を起こしてしまうのです。

抵抗力の弱い高齢者やお子さんでは、リスクが高まります。

阪神・淡路大震災の震災関連死の経験から、東日本大震災発生後は「お口の清潔を保てない高齢者は誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症を起こしやすくなる」と注意喚起がなされました。そこで、多くの歯科医師が被災地で口腔ケアにあたった事も記憶に新しいですね。しかしながら、残念な事に東日本大震災でも震災関連死の原因として、誤嚥性肺炎で亡くなった方が多くいらっしゃったそうです。改めて、歯科医師として災害時の口腔ケアの重要性について啓蒙していきたいと思いから、このブログを書いています。

非常用持ち出し袋に歯ブラシとコップを

それでは、災害時にできるだけ口腔ケアができるような備えについてまとめていきたいと思います。

まずは、基本的に災害時でもお口のケアが重要であるという事を覚えておいていただきたいと思います。汚れた唾液が誤って気管支に入ってしまうと誤嚥性肺炎を起こしやすいという事とセットで覚えておいていただければと思います。

災害時、飲料水が不足している時は、お茶などでクチュクチュうがいをするようにしましょう。もちろん、コップ1杯のお水があれば、それが最も良いでしょう。食後に、クチュクチュうがいを数回するだけでもお口の中がキレイになります。

歯ブラシがある時は、歯磨き粉がなくても、少しお水で湿らせて全体をブラッシングしてください。その後クチュクチュうがいをすれば完璧です。歯ブラシがない場合は、ハンカチなどを指に巻いて歯を一通りキレイにしても良いでしょう。できれば、いざという時の非常用持ち出し袋に歯ブラシを入れておいたほうがいいですね。軽いコップも入れておけば完璧です。

また、マウスウォッシュなども入れておけば、より安心です。マウスウォッシュは普段から使っている方もいると思いますので、常に多めに備蓄しておくといいでしょう。
また、マウス用ウェットティッシュもあるようですから、そういうものもあると便利かもしれません。

普段からデンタルフロスや歯間ブラシを使っている人は、被災時にも継続して使っていただきたいと思います。十分なお水がなく、十分な歯磨きができない時こそ、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して、口腔内をキレイにしておくとより良いと思います。

緊急時は、特にリスクの高い人に誤嚥性肺炎の注意を

ここまで、災害時の口腔ケアの重要性について簡単にまとめてみました。
しかしながら、突然起こる自然災害時には、なかなか落ち着いて冷静に対応できないのは当たり前だと思います。

精神的な動揺もありますし、家族や仲間の心配をするあまりに、冷静な状態で過ごすことはできません。口腔ケア等は後回しになるのもやむを得ないと思います。

しかしながら、できれば誤嚥性肺炎のリスクの高い方々には、できるだけ周りの方々が声をかけていただければと思います。
高齢者やお子さんなどです。特に高齢者は年齢を重ねるにつれて、咳をして気管に入ったものを外にだす筋力が弱くなっていたり、飲み込む運動が上手にできなくなり誤嚥性肺炎が起こりやすくなります。
特に入れ歯を使用している人や嚥下機能が低下している方々には、できるだけ口腔ケアやお口を動かす体操を促すことが必要になります。

こういう方々には、できるだけ誤嚥性肺炎を予防するため、マウスウォッシュでのクチュクチュうがい等を勧めるよう、声掛けをしていただければと思います。

備えあれば憂いなし、という言葉もありますが、最も大事なのは、災害時に起こると思われる様々な事柄を、事前に知識として取り入れる事だと思います。

歯科医療の視点から、少しでも役立つ情報発信ができればと考えています。